2007年02月01日

『猫泥棒と木曜日のキッチン』橋本紡

♪♪♪
このまえ初めて読んだ橋本さんの作品が #あんな感じの だったんだから、覚悟しておくべきでした。

本の装丁やイラストに惑わされてしまい、てっきり かわいくて微笑んじゃうような物語 なのかと思っていたら… 世の中そんなに単純じゃないか。 あ、勘違いしないでくださいね。 イヤな惑いではないですから!


ちっちゃい頃のことを思いだしてしまった。

とっても良い天気の日で とっても楽しい1日だったのに、 夕暮れになっても母が帰ってこない。 「おかあさんは?」 そんなことを考え始めたら、兄が遊びに行ったままのことも 父が仕事からまだ戻らないことも 気になりだしてしまった。 あたたかだった陽の光ももうすぐなくなって 闇の世界に入り込んでしまいそう。
眠るときならともかく、こんな時間から真っ暗な部屋の中に独りでいることに まだ幼かったワタクシは不慣れだった。 いつも誰かが電気のスイッチを入れてくれて 昼間よりも明るいかもしれない蛍光灯の下で 過ごしていたんだ。 だけど今は 誰もいない。 もちろん自分ではまだ 世界を明るく照らしてくれるはずのスイッチまで手が届かない。 もうすぐ陽がくれてしまう…、またそんなことを考え始めると こころがぞくぞくしてきた。 そして一大決心をした。
「さがしにいかなくちゃ。」
母と一緒に選んで買ってもらった お気に入りの運動靴を履き、 家から外に出て 角をひとつだけ曲がったところで、 太陽よりも先に 自分の心が暗闇の中に沈んでいってしまった。 泣きながら、泣きながら、前に進んでいく。 今この場所がどんなに怖ろしくても あの怖ろしく独りぽっちの部屋に戻ることはできない…。

主人公のみずきは17才の女子高生で、5才の弟コウちゃんと一緒に生活している。 だってお父さんはとっくにいなくなってたし、お母さんはついこの前家出しちゃったから。 それなのにみずきの反応は、あの時のワタクシとは違う。 母親を捜したり 行方を心配したりはしない。 今までだって家事なんてやってきたし、いまさら母親がいなくなっても大してウロタエたりはしない。 でもそれまでの生活とは変わったこともアルといえばアル。 そのひとつは、猫の遺体を見つけたら持ち帰り 自宅の庭へ埋葬すること。 そしてもうひとつ。 毎週木曜日の夕食は 最近知り合った健一君と弟コウちゃんと3人で食べること。 みずきに欠けていて みずきが欲しているものがなんなのか、ヒシヒシと伝わってきて 苦しくなる。

自分は愛されてたんだなぁ、今もそうなんだろうなぁ。

思わずちっちゃい頃の記憶が蘇ってしまったワタクシは、そんな風に感じてあったかくなった。 近所に買い物へ出かけただけの母親の帰宅が ほんの少し遅れてしまっただけで、 世界が終わるほどの絶望感や 世に語り継がれてもおかしくないと思えるほどの勇気を 小さい身体いっぱいで受け止めることができたアノ瞬間。 ほんの一瞬のことだったかもしれないけれど、それらは全て 普段の自分がどれだけ母から愛されているのかが分かる出来事だった。

みずきはどうだったろう。 やっぱり同じじゃないだろうか。 実母の言動は 自分の中の理想とする母親像とは違っていたけれど。 みずきが家族全員の影を眺めていたアノ瞬間、「これでみずきは大丈夫かもしれない」と少しだけ安心することができた。

親が子を捨てたのか、子が親を捨てたのか、本当のところは分からない。 人が人を捨てる物語ではあったけれど、これはみずきの家族の物語だった。





posted by MOW at 07:56 | Comment(2) | TrackBack(1) | 読書
この記事へのコメント
ご無沙汰していてごめんなさい。
MOWさんは、ネコ好き?でしたよね?
私も「ネコもの」にたいへん弱いです。
確かにこの装丁は、ネコ心をくすぐるものがありますね。装丁と中身が全然違うのってありますよー。この場合と逆に、装丁が怖くてひいてしまうっていうの、ありませんか? 私は京極堂シリーズの表紙がとてもコワイです(笑)
Posted by ぶんこや at 2007年02月03日 00:24
OH!京極堂シリーズ!
ワタクシ読んだことはありませんが、
やっぱり表紙には「ぴくりっ」と反応してしまいます。
内緒ですけど。(* ̄Oノ ̄*) ナイショ

あ、映画『輪廻』のパッケージで、
優香さんの顔にも恐怖を感じちゃいました。
あの表情…ぞぞぉー

イヌものはなんでも好きなんですけど、
ネコものは物語になっているものが気になります。
今回読んだ本も その最たるものですねー♪

あぅ。また何か読みたくなってきましたよぅ。
Posted by MOW at 2007年02月03日 14:13
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猫泥棒と木曜日のキッチン 橋本紡
Excerpt: お母さんが家出した。あっさりとわたしたちを捨てた―。残されたわたしは、だからといって少しも困ったりはしなかった。サッカーを奪われた
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2010-09-16 11:49
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