2007年03月19日

『忌中』車谷長吉

♪♪♪
この本の存在を知ってからもうすぐ1年(#tsukikoさんのブログ)。 やっとこさ 辿り着くことができました。 “タールみたいな”と言われると さすがに本を広げるには覚悟が必要で、 しかも「今ならワタクシ、そんな気分♪」と思ったときに うっかりアンソロジーに入ってた車谷さんの短編(#記事はこちら)を先に読んでしまい、 結局その短編が収録されている短編集(#記事はこちら)を貪ったので、今までオアズケになっていました。 それでもやってくる“タール”な季節。 人の心とはわからないものです。

「古墳の話」
私と伊佐さんは 2人とも古墳が好きだった。
初デートの約束の日、やはり彼女は来ない。
行方不明だから。
そして私は今、思い出の古墳で祝詞をあげる。

「神の花嫁」
茉莉子ちゃんはヴィーナスみたいに見える。
私と彼女とではとても釣り合わない。
私は今日も人形とともに過ごしていく。

「「鹽壺の匙」補遺」
「鹽壺の匙」の主人公、吉田宏之のことで、
ふたたび坊勢島を訪れた話。

「三笠山」
吉兼田彦は考えている。
事業のこと 妻のこと 子供たちのこと。
自分の会社がうまくいかない。限界だ。
そして今、一家で奈良のホテルに入った。

「飾麿」
あたしは今、ねえさんの旦那と密会している。
あたしの旦那の根岸は もういないから。
ふと根岸の墓参りに行こうかと思う。ふと。

「忌中」
菅井は今年で67才。妻の介護に追われていた。
でも今は介護から解放された。妻を殺した。
自分も死ぬつもりだったが、その機が失せた。
死ぬしかない状況へ 自分を追い込んでみよう。
妻のあとに続くため、もう暫く生きていよう。


表題作だし 知ってる場所が舞台だし
どうしても「忌中」が頭にのこってしまう。

主人公の菅井さんが住む築後50年の住居がある流山市東深井には利根運河がある。 もう少しで運河の土手沿いに綺麗な桜が咲き始めるだろう。 今年も片手で足りるくらいの数の露店が並ぶのだろうか。

そんな季節、タコヤキを頬張りながら桜を愛で ひと息ついて土手を下ると、運河の中に夥しい数の黒い物体が蠢いているのに気付く。 足下から、洋服の中を通ってウジ虫が這い上がってくる感覚におちいる瞬間だ。
それでも近づいてみると、鯉が群れているだけだった。 ホッとするのも束の間、 エサを求めて次々と口を開け始める鯉たちの執拗さに 寒気が全身を包み込む。

「忌中」の主人公である菅井さんの中の何かが、吸い込まれてしまったんじゃないか。 この鯉の口から。 そして川底のヘドロとともに 今でも藻掻いているんじゃないだろうか。
そんなイメージにワタクシはつきまとわれてしまう。
そして直後に悟る。 まさに今、自分が吸い込まれるかどうかの瀬戸際だということに…。





posted by MOW at 13:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | 読書
この記事へのコメント
MOWさん、吸い込まれないでください。
なんか、いつもと雰囲気が違うMOWさんです。
車谷さんの小説には、自分の暗闇を覗かせる何かがあって、読むときの体調を万全にしておかないとアブナイです。
MOWさん、カムバーッツク!
あ、もう、戻ってますね。
コメント、遅かったものね。ゴメン。
Posted by tsukiko at 2007年04月25日 01:11
tsukikoさん、こんばんは。
ほんとアブナイですね、車谷さんは。

考えてみればこの頃からおかしくなってきたような…
吸い込まれずになんとか踏ん張るみたいに
読書し始めたんですよー。取り憑かれてる?

そんなこんなで「雰囲気が変わってきたかも」と
自分でも思い始めていたMOWです。
あぁ…!!(><;)
Posted by MOW at 2007年04月25日 21:22
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